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【常識で解く企業経営理論】令和5年度 第11問:暗黙知

暗黙知に関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、専門用語(用語の解説を参照)を知らなくても常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和5年度 第11問

 野中郁次郎が提唱した組織的知識創造理論における中核的な概念の1つである暗黙知に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア ある時代や分野において支配的規範となる物の見方や捉え方であるパラダイムは、手法的技能としての暗黙知である。

イ 暗黙知は言語化が困難な主観的知識を意味し、そのまま組織的に共有させることが容易である。

ウ 経験は意識的な分析や言語化によっても促進されるため、暗黙知が形式知化されると新たな暗黙知を醸成する。

エ 知識創造の過程は暗黙知と形式知の相互変換であり、集団における暗黙知の共有や一致が知識創造の唯一の出発点である。

オ 豊かな暗黙知の醸成には、経験を積み重ねることが重要で、形式知化を行わないことが推奨される。

正解

解説

 野中郁次郎が提唱した組織的知識創造理論(用語の解説参照)を知らなくても、落ち着いて記述を読めば、選択肢の適否が判断できる設問です。
 設問にある「暗黙知」(用語の解説参照)は、文字通り暗黙の知識なので、選択肢イに記載のとおり、言語化が困難な主観的知識であることは推測できます。

ア ある時代や分野において支配的規範となる物の見方や捉え方(=パラダイム)は、個人の経験などに基づく、暗黙の知識とは相反するものであり、この記述は不適切です。

イ 暗黙知は言語化が困難であり、組織内で共有しにくいことが推測できます。また、主観的知識であれば、当然客観的でないのだから、そのまま組織的に共有させることは困難です。よってこの選択肢は不適切です。

ウ 暗黙知が形式知化され、組織メンバーに共有されると、個々のメンバーが個々にその知識からさらに深化した新たな暗黙知が形成されることから、暗黙知が醸成されると考えられます。よってこの選択肢が最も適切です。

エ 集団における暗黙知の共有や一致だけでなく、形式知同士や暗黙知と形式知の組み合わせなども知識創造の出発点といえるので、この記述は不適切です。

オ ウに記載したとおり、暗黙知が形式知化され、そこから新たな暗黙知が形成されることがあるので、「形式知化を行わないことが推奨される」という記述は不適切です。

用語の解説

【暗黙知】 個人の経験や直観、洞察などに基づく、容易に言語化できない知識のことをいいます。

【組織的知識創造理論】
 野中郁次郎が提唱した理論です。同理論に暗黙知と形式知の相互作用によって組織的に知識が形成されるプロセスとしてSECIモデルがあります。 SECIとは以下の4つの頭文字によるもので、暗黙知と形式知が相互作用しながら、この順番で知識創造が進むとされています。
共同化 (Socialization)  <暗黙知⇨暗黙知>
 師匠やベテラン社員が技能などを一緒に体験することで弟子や後輩社員に伝えるなど、経験を共有することによって、暗黙知を暗黙知として移転させることです。
表出化 (Externalization)<暗黙知⇨形式知> 
 体験を通じて伝えられた暗黙知を、言葉や文章、図解によって、暗黙知から形式知へ誰にでも共有できる形に変換するプロセスです。マニュアル化などはこれに当たります。
連結化 (Combination)  <形式知⇨形式知> 
 形式知を他の形式知と組み合わせることで、新たな形式知を創出します。データベースなどを用いて体系的な知識へ変換することなどはこれに当たります。
内面化 (Internalization) <形式知⇨暗黙知> 
 新たな形式知を繰り返し行うことで、個人の暗黙知として再び取り込まれていくプロセスです。反復作業によりマニュアルなしで業務が行え、さらに個人の工夫が加わり、新たな暗黙知となります。

他の設問

他の設問は以下をご覧ください。
中小企業診断士試験 常識で解く企業経営理論 過去問

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