MENU

【常識で解く企業経営理論】令和4年度 第9問:イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマに関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、専門用語(用語の解説を参照)を知らなくても常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和4年度 第9問

 C.M.クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』(The Innovatorʼs Dilemma)に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

a 破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品の性能の方が持続的技術を利用した製品の性能よりも低い。
b 破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品市場の方が持続的技術が対象とする製品市場よりも小規模である。
c 破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品の方が持続的技術を利用した製品よりも利益率が低い。

〔解答群〕

ア a:正  b:正  c:正
イ a:正  b:誤  c:正
ウ a:誤  b:正  c:誤
エ a:誤  b:誤  c:正
オ a:誤  b:誤  :誤

正解

解説

 「イノベーションのジレンマ」を直訳すると、改革や革新においての板挟みということになります。技術等の革新の中でどちらを選択するにしても苦しいような状況です。
 またaからcの記述の中には、すべてに「初期段階において」という前提が記載されています。
 これらから、技術革新が初期段階において苦しい状況とは何かを考えます。
 ここでは「破壊的技術」は革新的技術、「持続的技術」は従来技術の改善ととらえ、aからcを読み進めます。

a 革新的技術が登場した初期段階では、従来の技術に比べ性能がどうしても低くなります。
 例えば、デジタルカメラが市場に出てきた当初は、フィルム式のアナログカメラに比べて画像の質が低く、普及に時間がかかりました。しかし今では、デジタルカメラは性能の向上や低価格化などにより、フィルム式カメラの主役の座を奪っています。
 電気自動車(EV)も初期段階では、ガソリン車に比べ、航続距離が短いなどの性能面で劣るところがあります。
 よって、aは正しい記述といえます。
b 初期段階のデジタルカメラや現在の電気自動車の例からも革新的技術が登場した初期段階では、従来の技術に比べ、市場規模は小さいといえます。
 よって、bは正しい記述です。
c 同じくデジカメ、EVの例を考えると、革新的技術が登場した初期段階では、従来の技術を利用した製品に比べ、高コストであり、利益率が低いといえます。
 よって、cは正しい記述です。

 これらにより、aからcの記述はすべて正しいので、アが最も適切な選択肢となります。

用語の解説

【イノベーションのジレンマ】

 業界での優良企業は、顧客ニーズに応えるため、さらに品質の良い製品サービスの提供を目指し、新機能の付与や新技術による性能向上(持続的技術)に注力し、市場シェアを確保しようとします。
 それにより、別の需要に気付けず、全く異なる技術革新(破壊的技術)によって登場した新興企業に敗北する現象のことをいいます。
 設問のaからcに記載されたように、破壊的技術が登場した初期段階では、大企業や優良企業が持つ持続的技術を利用した製品の性能よりも低く、市場規模が小さく、高コストのため利益率が低いが故に、大企業や優良企業はなおさら新興市場への参入が遅れる傾向にあります。その結果イノベーションに立ち遅れ、失敗を招くという考え方です。

他の設問

他の設問は以下をご覧ください。

中小企業診断士試験 常識で解く企業経営理論 過去問

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次