組織における政治的行動に関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、専門用語を知らなくても常識に基づいて解説します。
企業経営理論 令和4年度 第17問
組織における政治的行動を「公式の役割の一部として求められるものではないが、組織における利益と不利益の分配に影響を及ぼす、もしくは影響を及ぼそうと試みる諸活動」と定義する場合、組織における政治的行動に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 経営幹部層が自己利益を追求して政治的駆け引きを行うことは、そうした行動が組織内で許容されることを従業員に暗示することで、政治的行動を助長する組織風土を醸成しやすい。
イ 経営資源の配分パターンの再編を伴う組織変革において、既得権益を失う恐れのある従業員は、自己防衛のための政治的行動に動機づけられる傾向がある。
ウ 従業員に公式に与えられた役割が曖昧であり、従業員の行動についての規定が明確でない場合、従業員が政治的行動に従事できる余地は大きくなる。
エ 従業員の昇進を巡る意思決定のプロセスでは、限られた昇進の機会を巡って、自らに有利な決定が下されるように影響力を及ぼそうとする政治的行動が従業員間で生じやすい。
オ 組織において報酬を従業員に分配する場合に、ゼロサムの分配基準を用いると、従業員間での勝ち負けが曖昧になるので、従業員は政治的行動に動機づけられやすくなる。
正解
オ
解説
冒頭の組織における政治的行動を一般常識的に言い換えれば、非倫理的な部分はあるが、自己の利益や権益を獲得するための駆け引き・画策と考えられます。
ア 経営幹部層が政治的駆け引きを行う場合、「公式の役割の一部として求められるものではなく」非倫理的であっても、従業員としてはなかなかそれに抵抗することは難しいといえます。経営幹部層が組織内で許容されることを暗示すれば、従業員としては、ますます抵抗感なく受け入れ、政治的行動を助長する組織風土を醸成しやすいことになります。よってこの記述は適切といえます。
イ 組織変革によって、既得権益を失う恐れのある従業員は、例えば組合行動を起こすなど、自己防衛のために政治的行動を行う動機づけになりやすいので、この記述は適切です。
ウ 記述は逆に、従業員に公式に与えられた役割がはっきりしており、従業員の行動についての規定が明確であれば、従業員の政治的行動についての範囲や規程も明確化されており、従業員が政治的行動に従事できる余地は小さくなるので、この記述は適切です。
エ 従業員の昇進を巡る意思決定のプロセスは、政治的行動が生じやすいことといえます。限られたポスト巡って、自らに有利な決定が下されるように駆け引きや画策を行おうとする場合が多いので、適切な記述です。
オ ゼロサムの分配基準を用いるということは、給与総額が限られている中で報酬を従業員菅において取り合いになることになります。そうすると、従業員間での勝ち負けが明確になるので、従業員は政治的行動に動機づけられやすくなります。よって「従業員間での勝ち負けが曖昧になるので」という記述が不適切です。
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