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【常識で解く企業経営理論】令和4年度 第32問:サービス、顧客満足

 サービス及び顧客満足に関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、専門用語(用語の解説を参照)を知らなくても常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和4年度 第32問

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、さまざまな業界において消費者の需要が低迷する中、多くの企業が製品やサービスを見直したり、新規事業を立ち上げたりすることによって、高い顧客満足を達成し、新たな顧客を獲得しようと考えている。

(設問 1 )

文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 元来、メーカーにとって工場で生産した製品を流通業者に販売した時点でビジネスは終了することが多かったが、近年は最終消費者への販売後の使用や消費の場面を含めてビジネスを設計する必要性が説かれている。このような傾向は「製造業のサービス化」と呼ばれる。
イ 顧客がサービスを購入し対価を支払う時点を指して「真実の瞬間」と呼ぶが、このときサービスの品質やコストパフォーマンスに関する顧客の知覚が最も鋭敏になる。
ウ サービスに対して消費者が感じる品質を知覚品質と呼ぶが、近年はスマートフォンのアプリなどを通じてデジタルで統一的にサービスが提供されることも多く、この場合はすべての消費者にとって知覚品質も一定となる。
エ サービスの特徴として、無形性、不可分性、異質性などとともに消滅性がしばしば指摘されるが、近年の SNS の浸透などによって、サービス提供の場面が撮影・録画の上で共有されるケースが増えてきたため、消滅性の問題は解消されつつある。
オ 製品と同様にサービスにも、探索財、経験財および信用財がある。これらのうち信用財とは、サービス提供者の信用が特に重要となる高級ブランドや高価格のサービスなどを指す。

(設問 2 )

文中の下線部②に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 企業が高い顧客価値の提供を通じて高い顧客満足を達成した場合、当該ブランドにロイヤルティを形成した顧客は真のロイヤルティを有する顧客であるから、その時点では、見せかけのロイヤルティを有する顧客が含まれる可能性は低い。
イ 顧客満足を高い水準に保つためには、サービスの現場においてスマートフォンのアプリによるアンケートなどを活用して顧客の意見や不満などを常に確認し、顧客の要望はすべて実現する必要がある。
ウ これからあるサービスを利用しようと考えている消費者にとって、サービスの品質は事前に把握できるのに対して、サービスの満足は利用してみなければ分からないという点で異なっている。
エ 相互に競合するいくつかのブランドのサービスの中で、消費者が特定ブランドのサービスを長く利用することは、それだけで当該消費者がそのブランドに対して高い顧客満足を感じている指標となる。
オ 品質の測定に関して、製品の品質は物理的に測定可能なのに対し、人間によって提供されるサービスの品質を測定することは困難である。このようなサービスの品質を測定するための 1 つの尺度として顧客満足が用いられるが、製品の品質を測定するために顧客満足が用いられることはない。

正解

(設問1)

(設問2)

解説

(設問1)

ア 製造企業は、製品を製造して流通業者に販売して終了とするビジネススタイルは従来のものであることから、前段の記述は正しいことが分かります。現在はアフターサービスやトラブル時の問題解決なども要請されていることから、「近年は」移行の記述も正しいと判断できます。ただ、これを「製造業のサービス化」(用語の解説参照)というか否かは、アフターサービスや情報提供サービスなどを加味するビジネスモデルだろうと思われることから正しいと推測できますが、常識だけでは断定できません。また設問1は下線部①「サービス」についての問いなのでこの記述は適切であると予想できますが、念のためイからオの記述を見ていきます。

イ 「真実の瞬間」(用語の解説参照)がサービスの品質やコストパフォーマンスに関する顧客の知覚が最も鋭敏になる瞬間であるとするなら、顧客が対価を支払う瞬間ではなくサービスを受ける瞬間であると判断できます。よってこの記述は不適切です。

ウ 知覚品質がサービスに対して消費者が感じる品質であるならば、感じるのは個々の消費者であり、いくらデジタル化が進み統一のサービスを提供してとしてもすべての消費者が一定の品質を感じることはあり得ません。よってこの記述は不適切です。

エ サービスの消滅性とは、サービスをストックできず消滅してしまう特性があるということだから、サービスの場面を撮影したとしてもサービス自体を撮影・録画することにより在庫できるわけではないので、「消滅性」は解消しないことが分かります。録画によりサービスの提供と消費が必ず同時に行われる「不可分性」を解消することは可能です。よってこの記述は不適切です。

オ 信用財(用語の解説参照)の意味は別にして、高級ブランドはサービス提供者の信用が特に重要となるといえますが、不当に高額なサービスを受けて低い品質評価だと気づく場合など、すべての高価格サービスが提供者の信用を担保しているとは言い難いので、この記述は不適切だと判断できます。

よって、アが最も適切な記述となります。

(設問2)

ア 「真のロイヤルティ」(用語の解説参照)の正確な意味を知らないとして、企業が高い顧客価値の提供を通じて高い顧客満足を達成した場合とは、サービスを受けたうえで高い満足感を得た場合ということだから、その顧客は真のロイヤルティを有する顧客であると想定できます。また、その時点で、「見せかけのロイヤルティ」(用語の解説参照)を有する顧客が含まれる可能性は低いことも想像できます。可能性がないと断定的な記述であれば疑う余地がありますが、低いのであれば、そのとおりと考えられます。よってこの記述は正しいといえます。

イ アンケートなどの活用や顧客意見や不満の確認は大事であることは正しい記述です。しかし、顧客の要望をすべて実現することは常識的に不可能な場合が多いと考えられます。よってこの記述は不適切です。特に選択肢において、「すべての」といった表現を使用している記述は疑ってかかるべきです。

ウ 後段のサービスの品質は提供を受けてみてはじめてわかることは正しいといえます。しかし、これからあるサービスを利用しようと考えている消費者にとって、サービスの品質を利用する前から把握することは困難な場合が多いといえます。よってこの記述は不適切です。

用語の解説

【製造業のサービス化(サービタイゼーション)】
 製造業のサービス化(サービタイゼーション)は、製品を流通業者に販売した時点でビジネスは終了するという従来のビジネスモデルとは異なり、製造とサービスを組み合わせることにより付加価値を生み出すビジネスモデルです。
 背景には、消費者の価値基準がモノからコトに移り変わったことやAI、IoTなどの技術進化などがあげられます。

【真実の瞬間】
 サービスの提供を受けて顧客が満足する瞬間のことを真実の瞬間といいます。39歳でスカンジナビア航空の最高責任者となったヤン・カールソンがはじめて使ったビジネス用語です。従業員が顧客ひとり当たり接点を持つ時間は僅か約15秒。この顧客と接する15秒間を「真実の瞬間」として充実させることが経営の成功につながると考えました。これにより赤字経営であった会社を1年で経営回復を実現しました。

【信用財】
 購入して実際に利用してもその品質の評価が困難な商品・サービスを「信用財」といいます。具体的には、医師や弁護士、コンサルタントなど専門的知識や技術を要する専門家からのサービス提供や、健康食品やサプリなど評価に個人差があるものが信用財に該当します。

【真のロイヤルティ、見せかけのロイヤルティ】
 真のロイヤルティは、顧客価値の高い商品やサービスの提供を受けて顧客が満足しているブランドにロイヤルティ(忠誠心)を形成している状態です。一方、見せかけのロイヤルティは、他のブランドに変えるのが面倒で、愛着はないが惰性で同じブランドを反復して購入している状態です。

他の設問

他の設問は以下をご覧ください。

中小企業診断士試験 常識で解く企業経営理論 過去問

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