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【常識で解く企業経営理論】令和5年度 第19問:集団の機能と集団内の人間行動

集団の機能と集団内の人間行動に関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、専門用語(用語の解説を参照)を知らなくても常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和5年度 第19問

 集団の中にいる人間の意思決定や行動は集団から影響を受ける。集団の機能と集団内の人間行動に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 「凝集性」が高い集団では、集団内の規範と組織全体の業績目標とが一致するため、集団内の個人の生産性が高まりやすい。

イ 「グループシフト」とは、集団のメンバーが個人として当初有していた極端な態度や意見が、集団で討議した結果、より中立的な方向に収束する現象を指す。

ウ 「集団圧力」を受けやすい状況下でも、正しい答えが明白な課題に取り組む場合は、個人が多数派の意見に同調して誤った答えを選択することはない。

エ 全体の和を重んじる集団では、意思決定に際して多数派の意見だけではなく少数派からの異論も奨励する「グループシンク」が促進されやすい。

オ 人が集団の中で働くときに単独で働くときほど努力しない「社会的手抜き」という現象は、個人の貢献と集団の成果との関係が曖昧な場合に生じやすい。

正解

解説

 凝集性や集団圧力などの専門用語(用語の解説を参照)を字面で推測して選択肢の適否を判断します。

ア 「凝集性」は凝り固まって集合すると書くので、集団内の規範に従う圧力が高くなる傾向があることは想像できます。しかし、その規範が組織の業績目標と一致するかどうかは不明です。一致すれば生産性が高くなる反面、一致しなければ生産性はむしろ低くなるので、この選択肢の記述は不適切です。

イ 「グループシフト」はグループの考え方にシフトすると考えると、グループの意思決定が極端なものである場合、メンバー個人の意見がそれと異なるものであったとしても、グループの極端な意思決定に収束することになるので、より中立的な方向に収束するという記述は不適切です。

ウ 「集団圧力」を受けやすい状況下では、個人が多数派の意見に圧力に屈して取り込まれる訳だから、個人が多数派の意見に同調して誤った答えを選択することはないという記述は不適切です。

エ 全体の和を重んじる集団は、多数派の意見を重んじて和を保つ傾向があるので、少数派からの異論を軽視して、少数派からの異論も奨励する可能性は低いといえます。また、「グループシンク」は直訳するとグループの考え方だから、少数派からの異論も奨励するものではありません。よってこの選択肢の記述は不適切です。

オ この記述とは逆に、個人の貢献と集団の成果との関係が明確であれば、個人の貢献が集団から正当に評価してもらえるので、「社会的手抜き」は生じにくいと考えられます。よってこの記述は適切といえます。

用語の解説

【集団凝集性】
 集団が構成員を引きつけて、その一員となるように動機づける度合いであり、集団の求心力や帰属意識のことです。

【グループシフト】
 「集団傾向」ともいいます。同じような意見や考え方を持つ人が集まって議論することでその方向性や進め方が極端になってしまうことです。 
 その構成員が個人的に極端な意見を持っている場合、他の同様の意見を持つメンバーとの議論により、極端な方向に収束します。

【グループシンク】
 「集団思考」、「集団浅慮」ともいいます。
 集団で合意形成を図ろうとする際、多様な視点から批判的に評価せず、不合理な意思決定を行う状況のことです。このような状況では、少数派の意見は軽視する傾向にあります。

【社会的手抜き】
 集団の中で作業を行うとき、少数人員や個人で作業をするときより一人当たりの生産性が低くなる現象です。
 集団の成果が構成員である個人の評価に結びつかい場合などに生じやすいといえます。

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