組織変革に対する抵抗に関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、専門用語(用語の解説を参照)を知らなくても常識に基づいて解説します。
企業経営理論 令和5年度 第23問
組織には、環境変化とそれに伴う組織変革に対して抵抗を示す側面がある。組織において変化や変革に対する抵抗が生じる理由に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 業務プロセスを変革したとしても、それと整合するように組織構造や業績評価システムといった他のサブシステムも併せて変革しない限り、変革を元に戻す組織的な作用が働きやすいから。
イ 現状の資源配分パターンから最も大きな利益を得ている部門は、環境変化に伴う資源配分パターンの変革を脅威と見なし抵抗する傾向があるから。
ウ 支援的な組織風土によって組織の心理的安全性を高めに維持しようとする構造的慣性が組織には存在するから。
エ 従業員が所属する集団の規範が、変革に対する従業員の前向きな考えや行動を抑制するように作用する可能性があるから。
オ 従業員の思考や行動を同質化する組織社会化のプロセスが、組織の革新性を阻害する可能性があるから。
正解
ウ
解説
ア〇 業務プロセスを変革したとしても、他のサブシステムも併せて変革しなければ、変革した業務プロセスが組織に適合せず、変革の有効性が見いだせない場合、構成メンバーは元に戻したいと考え、記述のとおり、変革を元に戻す組織的な作用が働きやすくなります。
イ〇 現状の資源配分パターンから最も大きな利益を得ている部門にとっては、現状が最適と考えています。よって、記述のとおり、環境変化に伴う資源配分パターンの変革を脅威と見なし抵抗する傾向があります。
ウ× 組織内で心理的に安全であるということは、構成メンバーは自分の考え方などを安心して発言できると解釈できるので、組織において変化や変革を促進することになります。よってこの選択肢は不適切です。
エ〇 従業員が所属する集団の規範があると、その守るべきことに対する変革に関する考えや行動を抑制するように作用する可能性があります。
オ〇 思考や行動を同質化すると、考え方や価値観が近い従業員が多くなり、異なる考え方を受け入れにくくなるので、記述のとおり、組織の革新性を阻害する可能性があります。
用語の解説
【組織の心理的安全性】
組織の中で自分の考えや気持ちを表現しても拒絶されず、安心して発言できる状態のことです。
【規範】
行動や判断の基準や標準となる模範で、ルールや習慣の一つです。
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中小企業診断士試験 常識で解く企業経営理論 過去問