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【常識で解く企業経営理論】令和3年度 第7問:競争戦略

 マイケル・ポーターの競争戦略や範囲の経済、経験効果、上澄み価格政策などに関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和3年度 第7問

競争戦略に関する事項の説明として、最も適切なものはどれか。

ア M.ポーター(M. Porter)によれば、競争戦略の基本は、規模の拡大による低コスト化の実現と製品差別化の同時追求にあり、製品差別化と結びつかない低コスト化の追求は、短期的には成功を収めても、中長期的には持続的な競争戦略にはならない。

イ ある特定の製品の生産・販売の規模を拡大することによって、生産・販売に関わるコスト、特に単位当たりコストが低下する現象は、「範囲の経済」と呼ばれており、コスト・リーダーシップの基盤となる。

ウ 経験効果とは、累積生産量の増加に伴い、単位当たりコストが一定の比率で低下する現象である。この累積生産量と単位当たりコストの関係に基づくと、将来の累積生産量から単位当たりコストを事前に予測して、戦略的に価格を設定することができる。

エ 製品差別化が実現している状況では、当該製品の顧客は代替的な製品との違いに価値を認めているために、競合製品の価格が低下しても、製品を切り換えない。したがって、このような状況では、需要の交差弾力性は大きくなる。

オ 製品ライフサイクルの初期段階で、コスト・リーダーとなるためには、大幅に価格を引き下げて、一気に市場を立ち上げるとともに、市場シェアを高める「上澄み価格政策」が有効である。

正解

解説

概ね、文脈で判断できる問題ですが、一部専門用語の知識が必要な選択肢もあります。

ア M.ポーターの3つの競争戦略(後述します)は、基本的には自社に合うものを一つ選び、単独で実行していくことで、状況によっては同時追求を行うことが提唱されています。また、低コスト化の追求は持続的な競争戦略になりうると一般的に考えられるので、アの記述は不適切です。

イ 生産・販売の規模を拡大と記載されていることから、この記述は「範囲の経済性」(後述します)ではなく、「規模の経済性」であることは明らかです。

 ウ 経験効果とは、記述されているとおりです。これを知識として知らなくても、物事を多く経験すれば効率よく作業できるわけだから、一単位を生産する時間やコストが低下することは常識的に判断できます。後段の記述も素直に読めば、適切であると想像できます。

 エ この選択肢の記述は、需要の交差弾力性の意味を知っていなければ、適否を判断するのは難しいといえます。
 しかし、「交差」弾力性という言葉、また文章中の「代替的な製品」との記載から、ある財の価格が高騰すれば、一般的には代替的な製品の需要は増加するのが常識です。ここでは、「競合製品の価格が低下しても、製品を切り換えない。」ということだから、需要の交差弾力性は小さいことになります。

 オ 上澄み価格政策(スキミング戦略)とは、市場に新商品を投入した初期段階で、価格を高めに設定し収益を確保する戦略のことです。
 しかしこれを知らなくても「上澄みをすくう」とは、混ざりものが底に沈んで、きれいな部分をすくうことを想像すれば、美味しいところ取りのイメージから、上澄み価格政策は、富裕層など、価格にあまりこだわらない購買層をまずつかむことだと想像できます。
 そうであれば、初期段階では「大幅に価格を引き下げて」という記述は不適切だと分かります。

用語の解説

範囲の経済性」とは、企業が自社の持つ経営資源やノウハウを複数事業に共用した事業活動を行うにより、より経済的な事業運営が可能になることをいいます。

マイケル・ポーターの3つの競争戦略とは、以下のとおりです。

コストリーダーシップ戦略;事業の経済的コストを、競合企業のコスト水準より下回るように引     き下げることで、競争優位を確保する戦略です。

差別化戦略;他社の製品・サービスの価値より、自社の製品・サービスの価値を高めて、製品差別化により企業が競争優位を獲得しようとする事業戦略をいいます。

集中戦略;企業の資源を製品、流通、地域など特定のターゲットに集中することです。

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