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【常識で解く企業経営理論】令和3年度 第12問:情報財

 情報財に関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和3年度 第12問

 ソフトウェアやコンテンツなどの情報財には、独自の特性があるとされる。その特性やそこから派生する状況として、どのようなことが想定できるか。最も適切なものを選べ。

ア インターネットの普及によって情報財の流通コストは低下しているために、情報財をその一部でも無償で提供すると、広告収入以外で収入を獲得することは不可能になる。

イ 情報財では、幅広いユーザーが利用するという特性から、スイッチングコストを生み出して顧客を囲い込む方策は、例外的な状況を除いて有効ではない。

ウ 情報財では、複製にかかるコストが相対的に低いという特性から、個々の顧客が持つ価値に応じて価格差別を行うことは困難である。

エ 情報財において、ネットワーク外部性が大きい状況では、顧客数が増えるほど、その情報財の価値は顧客間で希釈化され、個々の顧客が獲得する効用は低下する。

オ 制作・開発には多額のコストがかかるが、複製にかかるコストは低いという特性を持った情報財では、コモディティ化によって製品市場で激しい価格競争が生じると、複製にかかるコストの近傍まで製品価格が下落して、制作・開発にかかったコストが回収できなくなる可能性がある。

正解

解説

ア 無料公開後に一部のヘビーユーザーからの支払いで他の利用者を一定容量まで無料にする経費を賄うビジネスモデルがあり、広告収入以外でも収入獲得は可能です。よってアは不適切です。

イ 顧客の個人情報や購買履歴などのデータベースの分析により、顧客を囲い込む方策は有効といえます。よってイは不適切です。

ウ 情報財では、複製によるコストは低いものの、著作権や知的財産権により情報剤のすべてが複製可能なわけでないので、個々の顧客が持つ価値に応じて価格差別を行うことは困難であるとはいえない。よってウは不適切です。

エ ネットワーク外部性(後述します)を詳細に知らない場合、「外部性」が経済主体の行為などが顧客などに影響を与えるイメージがあれば、個々の顧客が獲得する効用は増加すると想像できます。よってエは不適切です。

オ コモディティ化(後述します)の意味を知らない場合、これを飛ばして記述文章を「多額の開発コストがかかった情報財は、激しい価格競争が生じると、製品価格が下落して、開発コストが回収できなくなる可能性がある。」と素直に読めば、適切であると分かります。

 選択肢の文章中、「可能性がある」という言い切らない表現は、適切な場合が多いので、気に留めておいてください。

用語の解説

ネットワーク外部性とは、同じ財・サービスの利用者が増えれば増えるほど、その財・サービスの質やメリット、便益が利用者に還元される現象をいいます。

またコモディティ化とは、市場参入当初は、高付加価値を持っていた財・サービスが、提供者ごとの個性を失い、市場価値が低下し、一般的な財・サービスになることです。

ネットワーク外部性については、以下の記事を参照してください。
    「ネットワーク外部性とは〜製品戦略に組み込んで高いシェアを狙う」

また、コモディティ化は、以下の記事が詳しく記載されています。
    「コモディティ化Commoditization」

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