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【常識で解く企業経営理論】令和3年度 第19問:コンフリクト

 組織におけるコンフリクトに関する 中小企業診断士試験・過去問での 設問について、常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和3年度 第19問

 J.G.マーチ(J. G. March)とH.A.サイモン(H. A. Simon)は、コンフリクトを標準的意思決定メカニズムの機能不全としてとらえた。

 組織におけるコンフリクトに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 意思決定に必要な情報の入手先が多様になると、組織の参加者間で認識の差異は小さくなるので、個人間コンフリクトは少なくなる。

イ 組織全体の目標の操作性が低く、曖昧さが増すと、部門目標間の差異が許容される程度が高くなるので、部門間コンフリクトは少なくなる。

ウ 組織内にスラックが多く存在すると、部門間で共同意思決定の必要性が低下するので、コンフリクトは発生しにくくなる。

エ 部門間コンフリクトが発生した場合、政治的もしくは交渉による解決策を見いだすことが、コンフリクトの原因の解消に有効である。

正解

解説

 マーチやサイモンが唱えるコンフリクト(後述します)の詳細を知らなくてもコンフリクトが衝突や論争、争い、対立などであると考えれば、各選択肢の文章の流れで適否が判断できます。

ア 意思決定に必要な情報の入手先が多様になると、個人は多種多様な情報を得ることにより、認識の際が大きくなるので、個人間コンフリクトは多くなります。従って不適切な選択肢です。

イ 組織全体の目標が曖昧だと、部門間の目標の違いも曖昧になり、目標際の許容度が低くなり、部門間コンフリクトは多くなります。よって不適切な選択肢と判断できます。

ウ スラック(後述します)を直訳すると、たるみや余裕などです。組織内にスラックが多いとは、ヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源に余裕があるということになります。経営資源に余裕があれば、部門間での予算の取り合いなどコンフリクトは発生しにくくなります。よってウは正しい記述といえます。

エ 部門間コンフリクトが発生した場合、交渉や取引による解決策は有効ですが、政治的解決策は失敗すると返ってコンフリクトが増幅するので有効とは言えません。よってこの記述は不適切です。

用語の解説

 マーチやサイモンは組織論を意思決定論として捉えています。両者にとってコンフリクトは「意思決定不能」を意味します。よって組織のコンフリクトは組織の意思決定不能を指します。

 組織スラックとは、企業などの組織が持つ余剰資源のことです。具体的には、余剰人員、余剰在庫、余剰資金などを指します。

 ギリギリの経営資源で経営すると経営環境が変化した際にリスクを伴います。企業の存続と成長のために組織スラックは必要不可欠なものです。

 一方で、過剰なスラックはチェック体制の低下などから、意思決定に悪影響を与えることもあります。

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