企業と消費者の共創（co-creation）に関する 中小企業診断士試験・過去問での 設問について、常識に基づいて解説します。
企業経営理論 令和3年度 第30問
近年は、企業（メーカー）と消費者が共に製品開発を行う共創（co-creation）が多くの企業によって導入されている。このことに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 企業が企業外部のアイデアを取り入れながら価値を創造するオープン・イノベーションでは、企業は一貫して自社内のアイデアが外部に出ることがないように留意する必要がある。
イ 企業は共創によって新奇性の高い製品を開発できる可能性があるものの、当該製品を購入する消費者から見た場合は、共創によって開発された製品は企業が開発した製品より信頼性が劣ると感じる傾向がある。このため企業は、その製品が共創によって開発されたという事実を伏せて発売することが望ましい。
ウ 共創によって消費者と共に製品開発を行おうとする企業が増えつつある現状に対抗して、伝統的な方法により自社内の経営資源のみに基づいて製品開発を行う方が優れた製品を開発できると考える企業もあり、このような企業の考え方や行動様式は一般に「シーズ志向」と呼ばれることが多い。
エ 伝統的な製品開発では、企業が意思決定を行うために、専門的な知識を有していたり、製品の特殊な使い方を提案したりするなどの先進的消費者を対象とした市場調査が実施される場合が多かった。これに対して共創においては、一般に市場の平均的消費者に関するビッグデータが用いられる。
正解
ウ
解説
設問の冒頭に共創（co-creation）について、企業（メーカー）と消費者が共に製品開発を行うことと記載されています。これを踏まえて、各選択肢の記述を読めば、その適否を判断することができます。
ア オープン・イノベーション（後述します）では、自社内のアイデアを外部にオープンにすることによってイノベーションを創出すると考えると、不適切な選択肢です。
イ 共創が、企業と消費者が共に製品開発を行うことであるから、その製品は企業が独自に開発した製品より消費者からの信頼性が優位に感じる傾向があるといえます。よって、不適切な選択肢です。
ウ 「シーズ志向」と「ニーズ志向」（後述します）について考えると、「ニーズ志向」は、消費者のニーズに基づいて製品開発を行う一方、「シーズ思考」は、伝統的な方法により自社内の経営資源のみに基づいて製品開発を行うことであり、この選択肢は適切な記述です。
エ 製品の特殊な使い方を提案したりするなどの先進的消費者を対象とした市場調査は、消費者と共に製品開発を行う、「共創」において実施されることが多いので、不適切な選択肢です。
用語の解説
オープン・イノベーションは、製品開発などにおいて、技術情報や知識などに対する社内外の境界をなくして、自由に流出入させることによって、イノベーションの創出を目指すものです。
対局的なコンセプトとして、技術情報や知識などを社内にとどめ、イノベーションを創出するクローズド・イノベーションがあります。
「シーズ志向」は、自社の独自のノウハウや情報を活用して新商品、新サービスを開発して提供することです。
一方、「ニーズ志向」は、消費者目線に立った新商品、新サービスを提供することをいいます。
