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【常識で解く企業経営理論】令和2年度 第33問:社会的アイデンティティ

社会的アイデンティティに関する 中小企業診断士試験・過去問での 設問について、常識に基づいて解説します。

企業経営理論 令和2年度 第33問

 消費者と社会的アイデンティティに関する記述として、最も適切なものはどれか。

 ア 感覚や好みに基づいて選択される場合と異なり、専門的知識が必要な製品やサービスに関しては、消費者は属性や価値観が自分と類似している他者の意見やアドバイスを重視する。

 イ 自己アイデンティティを示すため、消費者は拒否集団をイメージさせるブランドの選択を避ける傾向がある。この傾向は、他者から見られている状況において行う選択よりも、見られていない状況において行う選択で顕著に強くなる。

 ウ 自己概念において社会的アイデンティティが顕著になっている場合、自分が所属している内集団で共有される典型的な特徴を支持するようになる一方、自分が所属していない外集団すべてに対して無関心になる。

 エ 自分に影響を与えようとする意図をもった他者が存在する場合、消費者の行動はその他者から強く影響を受ける一方で、単にその場にいるだけの他者からは、影響を受けることはない。

 オ 自分に対する他者からの否定的な評価を避け、肯定的な評価を形成していこうとする欲求は自己高揚と呼ばれる。自己高揚のレベルが高い消費者は、自分の所属集団よりも、願望集団で使用されているブランドとの結びつきを強める傾向がある。

正解

解説

 社会的アイデンティティとは、自分がどのような社会集団に所属しているのかという自己認識のことです。自分は〇〇大学出身である。□□株式会社の社員であるといった、自分がどのような社会的カテゴリーに属しているかによって規定される自己のアイデンティティのことをいいますが、これらを理解していなくでも選択肢の適切・不適切は判別できます。

ア 「専門的な知識が必要」なのだから、属性や価値観が自分と類似している他者ではなく、専門的な知識を持つ人のアドバイスを重視するはずです。むしろ感覚や好みに基づいて選択される場合にそのような人の意見を聞くのだから、この選択肢は不適切です。

  イ 拒否集団をイメージさせるブランドは、他者の目を気にするわけだから、特に他者から見られている状況では避ける傾向があるので、不適切な記述です。

  ウ 社会的アイデンティティが顕著、内集団で共有される典型的な特徴を支持するようになるということは、外集団と比べて高く評価する傾向にあるということだから、外集団を意識しているので、全く無関心になるということではありません。よって不適切な記述といえます。

  エ 自分に影響を与えようとする意図をもった他者がいて、消費者がその意図する言動を全面的に信じる場合もあれば、疑う人もいますよね。その場合は、その他者の影響を受けないこともあり得るし、単にその場にいるだけの他者から影響を受ける場合もあります。よって不適切です。

  オ 自己高揚が何かを知らなくても、他者からの否定的な評価を避け、肯定的な評価を形成していこうとする欲求レベルが高ければ、願望集団で使用されているブランドとの結びつきを強める傾向があるというのは、誤りではなさそうと判断できます。願望集団は文脈からみて、そこに属したいと思っているグループだと想像すれば、この選択肢の記述は適切だと、より判断できます。

  オの記述だけを読んで、これが適切だと判断するのは難しいですが、アからエが明らかに不適切であり、オの「自分に対する他者からの否定的な評価を避け、肯定的な評価を形成していこうとする欲求」が「自己高揚」であることが正しいのでさえあれば、この選択肢は誤っていないだろうと判断できます。

   また、ウの「すべてに対して・・・」やエの「・・・ことはない」という断定的な表現は不適切ではないかと疑ってみるべきです。

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