マーケティング・コンセプトに関する 中小企業診断士試験・過去問での 設問について、常識に基づいて解説します。
企業経営理論 令和2年度 第28問
マーケティング・コンセプトおよび顧客志向に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 企業は顧客を創造し、顧客の要望に応えることを基礎とする一方で、競合他社との競争にも気を配る必要がある。これらをバランスよく両立する企業は、セリング志向であるということができる。
イ ケーキ店Xが「どの店でケーキを買うか選ぶときに重視する属性」についてアンケートを複数回答で実施した結果、回答者の 89 %が「おいしさ、味」を選び、「パッケージ・デザイン」を選んだのは 26 %だった。顧客志向を掲げるXはこの調査結果を受け、今後パッケージの出来栄えは無視し、味に注力することにした。
ウ マーケティング・コンセプトのうちシーズ志向やプロダクト志向のマーケティングは、顧客志向のマーケティングが定着した今日では技術者の独りよがりである可能性が高く、採用するべきではない。
エ マーケティング・コンセプトはプロダクト志向、セリング志向などを経て変遷してきた。自社の利潤の最大化ばかりでなく自社が社会に与える影響についても考慮に入れる考え方は、これらの変遷の延長線上に含まれる。
オ マーケティング・コンセプトを説明した言葉の中に、“Marketing is to make selling unnecessary” というものがあるが、これはマーケティングを「不用品を売ること」と定義している。
正解
エ
解説
ア セリング志向は、良い製品を作ったのだからとにかく売ることを重視すると予想すると、顧客の要望に応えることと矛盾します。よって不適切な選択肢です。
イ パッケージを選んだ人が26%もいるのに全く無視するなんて考えられませんよね。
ウ 顧客志向のマーケティングが定着していても、良いものを製作する考え方は、採用すべきでないと言い切れるでしょうか。よって不適切な記述です。
エ 「マーケティング・コンセプトはプロダクト志向、セリング志向などを経て変遷してきた」という記述については、他の選択肢の文面から、そのとおりだと考えられます。「社会に与える影響」への考慮は、現在も今後も重要な概念であり、これまでの変遷の延長線上といえるので、この選択肢の記述は最も適切です。
オ 不用品を売ることがマーケティングであるというのは、常識的に考えておかしいと気づくはずです。unnecessaryの不要は、“売り込み”を不要にすること(ピーター・ドラッカー;後述します)だと知らなくても文章に違和感がありますよね。
用語の解説
“Marketing is to make selling unnecessary”は、ピーター・ドラッカーの言葉で、「マーケティングは売り込みを不要にする」という意味です。