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【常識で解く企業経営理論】令和2年度 第12問:国際展開

 中小企業の国際展開に関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、常識に基づいて解説します。

企業経営理論 令和2年度 第12問

 C.A.バートレットとS.ゴシャールは、本国の本社と海外拠点間との分業関係や各拠点間の統合のあり方を基軸として、国際的に展開する企業の経営スタイルを、インターナショナル、グローバル、トランスナショナル、マルチナショナルの4つに分類している。これら4つの類型の基本的な特性は、それぞれ次のようにまとめられる。

a 資産や能力は本国に集中して、その成果は世界規模で活用される。海外拠点は本国の本社の戦略を忠実に実行する。知識は本国で開発・保有される。
b コア・コンピタンスの源泉は本国に集中するが、その他は分散される。海外拠点は本社の能力を適用し、活用する。知識は本国で開発され、海外拠点に移転される。
c 資産や能力は各国の拠点に分散されるとともに、本社を含む各国の拠点は相互依存的であり、専門化されている。知識は各国の拠点で共同で開発され、世界中で共有される。
d 資産や能力は各国の拠点に分散され、それぞれ自己充足的に活動する。海外拠点は現地の機会を感知して、活用する。知識は各国の拠点で開発・保有される。

 上述のa、b、c、dは、それぞれインターナショナル、グローバル、トランスナショナル、マルチナショナルのいずれに該当するか。それらの組み合わせとし て、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

〔解答群〕
 ア a:インターナショナル  b:マルチナショナル
   c:グローバル      d:トランスナショナル

 イ a:グローバル      b:インターナショナル
   c:トランスナショナル  d:マルチナショナル

 ウ a:グローバル      b:トランスナショナル
   c:マルチナショナル   d:インターナショナル

 エ a:トランスナショナル  b:グローバル
   c:インターナショナル  d:マルチナショナル

 オ a:マルチナショナル   b:グローバル
   c:インターナショナル  d:トランスナショナル

正解

 通常、グローバル、インターナショナル、トランス、マルチの意味は、以下のとおりです。

  ・グローバル;包括的、世界的な規模である状態、地球規模
  ・インターナショナル;国際的
  ・トランス;他の側へ、横切って、変圧器など
  ・マルチ;種類などが多い状態、複数の

 これから考えると、ますグローバル経営やグローバル展開、グローバル戦略という言葉を思い浮かべれば、経営の主軸は国内に合って、海外拠点を構えるイメージがあります。
 また、トヨタやホンダなどインターナショナルな企業が、例えばメキシコに拠点を置いたとし、そこでは従業員はメキシコ人であっても役員は日本人であることが多いですよね。
 とすれば、グローバル、インターナショナルのどちらかがaでどちらかがbだろうと予想できます。
 一方、トランスは他に移してしまうイメージ、マルチはそれぞれ独自なものが複数あるイメージです。
 それから類推すると、トランスナショナルとマルチナショナルのどちらかがcでどちらかがdだと想像できます。
 そこまでわかれば、解答群のイしかありません。
 インターナショナルとグローバル、トランスナショナルとマルチナショナルのそれぞれの厳密な違いが判らなくても答えられる問題です。

用語の解説

   グローバルは、本国のグローバル本社が全ての意思決定権をもつ形態です。海外子会社の権限を制約して、本社の指示に従って事業を運営します。

   インターナショナルは、経営資源や権限をある程度、海外子会社に委任しますが、本国のグローバル本社が主体的に意思決定する形態です。

  トランスナショナルは、本社が緩やかにガバナンスを効かせつつ、海外子会社に意思決定を委任し、経営資源をそれぞれの機能の専門能力に応じて分配し、各国の現地法人が経営資源の調整などの面で連携しながら事業運営される形態です。

   マルチナショナルは、海外子会社が独自の経営方針や経営資源で事業運営を行い、本社はそれを緩やかにマネジメントする組織形態です。

 海外子会社(各国現地法人)の独立性が高い(本社の意思決定権が緩やかな)形態から並べると以下の順番です。
    マルチナショナル>トランスナショナル>インターナショナル>グローバル

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