スリーサークルモデルに関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、常識に基づいて解説します。
企業経営理論 令和2年度 第11問
次の文章を読んで、問題に答えよ。
企業Aは、前社長のBが30年前に設立した株式会社であるが、Bが高齢化のため、すでに10年前から同社の役員を務めていた長男Cが社長に就任し、Bは会長に就任した。会長としても、毎日出社して仕事は継続する。CはBが所有する株式をすべて買い取り、Cの持株比率は5%から60%になり、Bの持株比率はゼロになった。Bの妻Dも所有する株式すべてを長女Eに譲り、Eの持株比率は10%から20%になった。DもEも、社長の交代前も後も企業Aの役員や従業員ではない。また、Bとともに企業Aを支えていた家族以外の役員5人も退社し、所有していた20%の持株すべてを子供たち10人に譲った。
ファミリービジネスのシステムを、「オーナーシップ(所有)」「ビジネス(事業)」「ファミリー(家族)」の3つのサブシステムから成るスリー・サークル・モデル(下図参照)で表した場合、企業Aの社長交代前と交代後のB、C、Eのスリー・サー クルにおける位置の変化を示す最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
正解
エ
解説
登場人物の前社長B、現社長C及び長女Eはすべてファミリー(家族)。
株式を所有している=オーナーシップ(所有)であり、Cの持ち株比率は5%から60%、Eの持株比率は10%から20%になったのだから、社長交代前も後もCとEは所有していることがわかります。一方お父さんのBはすべて長男に株式を譲渡したのだから、交代前はオーナーシップ(所有)で交代後はそうでないことになります。
会社の役員・従業員=ビジネス(事業)と考えれば、BとCは交代前後とも役員だからビジネス(事業)であり、Eは役員・従業員でありません。
よって、前社長Bの交代前は、すべてのサブシステムが交わる1、交代後はビジネスとファミリーが交わる4になります。
現社長Cは、交代前も後もすべてのサブシステムが交わる1です。
長女Eは、交代前も後もファミリーとオーナーシップが交わる2になります。
なお、スリーサークルモデルについては、令和3年第9問でも出題されています。