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【常識で解く企業経営理論】令和2年度 第4問:競争優位

 企業の競争優位に関する設問について、常識に基づいて解説します。

企業経営理論 令和2年度 第4問

 企業の競争優位に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア PIMS(Profit Impact of Market Strategy)プログラムでは、市場シェアの追求と知覚される相対的な品質の追求は両立できないことが、明らかにされている。

イ 経験効果における習熟度は業界の特性に関わらず一定であるために、累積生産量の増加に伴う単位当たり費用の変化は、いかなる業界においても同様の習熟度を係数とする式で示される。

ウ 経験効果を利用したコスト・リーダーシップを追求する場合には、競合企業よりも多くの累積生産量を達成するために、できるだけ早い時点で参入することが 有効な方策となる。

エ 製品差別化が有効である場合には、価格が上昇しても、競合する製品への乗り換えが生じにくいことから、需要の交差弾力性は高い。

オ 範囲の経済は、多角化を進める要因であることから、特定の事業においてコスト・リーダーシップを追求する上では、影響をもたらさない。

正解

解説

ア PIMSの意味(後述します)が分からなくても、市場シェアを高めるための要素として品質の追及は大事なので、両立しないという記述は矛盾すると想定できます。よって不適切といえます。

イ 経験すればするほど、つまり同じものを何度もつくるうち、慣れてきて生産スピードが上がり、製造コストが低下します。その効果の度合いが経験効果(後述します)における習熟度であると考えると、同じ業界内であれば同様の製品・サービスを生み出すので、習熟度は大きな違いはないでしょうが、業界の特性が異なれば同様ではないと考えられます。よって、「経験効果における習熟度は業界の特性に関わらず一定」という記述は不適切だといえます。

ウ 「経験効果→コスト削減→累積生産量達成」を実現したければ、操業期間が長いほうが有利です。それには早くから参入するに越したことはないので、この選択肢の記述は適切だといえます。

エ 「製品差別化が有効」とは、自社製品を競合他社製品に比べ、顧客が優良なものと認めてくれていることと想定できます。需要の交差弾力性とは、価格が高くなれば、需要が弾力的になると考えると、価格変化に対し弾力的に需要も増減するということになります。「製品差別化が有効である場合には」、つまり人気のある製品は、価格が高くなっても競合製品の需要は、そうそう増えないわけだから、価格弾力性は低いということになり、選択肢の記述は矛盾します。

オ 範囲の経済(後述します)は、多角化を進める要因とのことであり、特定の事業においてコスト・リーダーシップを追求するという考え方は、多様化に向けて事業展開をするうえで重要です。よって影響を与えないという記述は不適切です。

用語の解説

 PIMSとは、1972年にハーバード・ビジネス・スクールが中心となった調査機関による分析です。PIMSは市場戦略と業績の関係を業績に対する最重要要因は、相対的な品質の追求、市場シェアと収益性も強い連携などについて指摘しています。

 経験効果とは、経験曲線効果(Experience Curve Effects)ともいい、1966年に、アメリカのボストン・コンサルティング・グループのブルース・ヘンダーソン氏が発見た分析結果で、作業の経験が倍増するにつれて製品単位当たりの平均費用が逓減することをいいます。

 範囲の経済とは、同一企業が多角化を進め、異なる複数の製品・サービスを生産・提供することが、別々の企業が独立して行うよりも総費用が低くなり効率的であることです。

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