MENU

【常識で解く企業経営理論】令和2年度 第3問:交渉力

 交渉力に関する設問について、常識に基づいて解説します。

企業経営理論 令和2年度 第3問

 「業界の構造分析」の枠組みに基づいて考えられる、売り手(サプライヤー)と買い手(顧客)との間での交渉力に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 新たな企業が売り手として参入できる場合には、新規参入が不可能な場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。

イ ある売り手が供給する製品と他社の競合製品との間での互換性が高い場合には、互換性が低い場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。

ウ ある売り手が供給する製品を買い手が他社の競合製品に切り換える際に、買い手がその製品の使用方法を初めから学び直す必要がある場合には、その必要がない場合と比べて、買い手に対する売り手の交渉力は低下する。

エ 売り手が前方統合できる場合には、前方統合が不可能な場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。

オ 売り手側のハーフィンダール指数がゼロに近づくほど、買い手に対する売り手の交渉力は高くなる。

正解

解説

ア 新たな企業が売り手として参入できる場合、参入障壁が低いということだから、多くの売り手に対し、買い手が有利でるので不適切な選択肢だとわかります。

イ 競合製品と互換性が高ければ、買いたい製品が他にもあるということだから、買い手有利で、不適切です。

ウ 買い換えれば使用方法を学びなおさないといけないなら、買い手は同様の製品を買おうとする(スイッチングコストが高い状態)ので、売り手有利で、不適切です。

エ 前方統合が可能とは、後述のとおり、例えば部品メーカーが製品の製造販売業に進出できるということです。売り手が部品と製品の両方のノウハウを持っているとすれば、売り手は有利になり、買い手の交渉力は低下します。よって、適切な選択肢です。

オ 売り手側のハーフィンダール指数は、後述のとおり市場占有の度合いを表し、それが0に近づけば、競合が多いということだから、買い手有利になり、買い手に対する売り手の交渉力は高くなるとするのは不適切です。

 エとオは、「前方統合」及び「ハーフィンダール指数」の用語がわからなければ、選択は困難です。そういうことで、この問題は、1/2の正解率ということになります。
 ただ、「売り手側が〇〇できる場合」との記載から、“できる”のだから、できない場合と比べれば、売り手の方が交渉力は高くなる(買い手の交渉力は低くなる)ことが予測できるので、エが最も適切と想像できます。

用語の解説

 前方統合とは、例えば原材料供給者が部品メーカーに、部品メーカーが製品の製造販売業に進出することです。原材料生産から製品販売への業界の流れの中で、原材料に近いほうを川上、製品に近いほうを川下といいます。川上から川下に進出することが前方統合です。

 ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)とは、ある業界の市場における企業間の競争状態を測るもので、市場占有の度合いを表します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!