MENU

【常識で解く企業経営理論】令和3年度 第6問:5フォースモデル

 マイケル・ポーターの5フォースモデルに関する 中小企業診断士試験・過去問での 設問について、常識に基づいて解説します。

目次

企業経営理論 令和3年度 第6問

 次の文章を読んで、問題に答えよ。

 X社は全社的な成長に向けて、新たな業界に参入して、新規事業を展開することを計画している。参入先の候補として考えられているのは、AからEの 5 つの業界である。社内で検討したところ、各業界の重要な特性として、次のような報告がプロジェクトチームから上がってきた。なお、X社では、いずれの業界においても、各業界における既存の取引関係を用いるとともに、製品・サービスの質とコストに関して既存企業と同様の条件で参入することを想定している。

A業界:この業界には、既に 5 社が参入している。主要な原材料は老舗のF社から5 社に対して安定的に供給されている。A業界の製品は規模が類似した代理店 5 社を通じて販売されている。

B業界:この業界では、 4 社が事業を展開している。G社が主要な原材料に関する特許を保有しているために、これら 4 社は、原材料をG社から購入する契約を結んでいる。これら 4 社の製品は、H社が全量購入している。

C業界:この業界には、既に 4 社が参入している。主要な原材料は 5 社から購入できるが、生産工程での安定性を考えると、その 1 社であるK社の原材料が優れているために、K社の販売数量は他の 4 社の合計よりも多い。C業界の製品の販売を委託する企業は 5 社存在するが、その中でもL社が強い営業力を有し、他の 4 社を圧倒した市場シェアを獲得しており、ガリバー的な存在である。

D業界:この業界では、6 社が事業を営んでいる。D業界の製品は技術革新により年々性能が向上しているが、その性能向上は、主要な原料を供給するM社の技術革新を源泉としているために、全量をM社から調達している。D業界の製品は特殊なサポートが必要であることから、そのサポート体制を有するN社を通じて全量が販売されている。

E業界:この業界には、既に 2 社が参入している。原材料の汎用性は高く、コストと品質で同等の水準となる供給業者が 10 社存在している。顧客は 5 つの業界であり、いずれの業界でも、規模が類似した 10 社以上が事業を展開している。

 以上に記された情報に基づいて、各業界での競争状況、供給業者の交渉力、買い手の交渉力を業界構造として総合的に考えた場合に、X社が参入する業界として、最も高い収益性(売上高に対する利益率)が期待されるものはどれか。

 ア A業界
 イ B業界
 ウ C業界
 エ D業界
 オ E業界

正解

 オ

解説

 この問題は、マイケル・ポーターの5フォースモデル(後述します)のうち、「業界内の競合」、「供給業者の交渉力」、「買い手の交渉力」を考慮して、効果的な参入が期待できる業界を選ぶものです。
 しかし、5フォースモデルの内容を知らなくても、常識的に文面を追えば、E業界が最も期待できるのは明白です。
 しかも、設問に「各業界での競争状況、供給業者の交渉力、買い手の交渉力を業界構造として総合的に考えた場合に」と記載されていますので、この観点から考えれば正解を導き出せます。

A業界:主要な原材料は老舗のF社から安定的に供給されていることから、供給業者の交渉力が強いので参入しにくい。

B業界:G社が主要な原材料に関する特許を保有し(供給業者の交渉力が強い)、H社が全量購入している(買い手の交渉力が強い)ので参入しにくい。

C業界:主要な原材料は、K社が強く(供給業者の交渉力が強い)、C業界の製品の販売を委託する企業ではL社が強い営業力を有している(買い手の交渉力が強い)ため、参入しにくい。

D業界:製品の技術革新を原料供給業者のM社に頼っており(供給業者の交渉力が強い)、製品のサポート体制を有するN社を通じて全量が販売されている(買い手の交渉力が強い)ことから、参入しにくい。

E業界:他業界の既存企業が4~6社であるのに比べ、E業界では2社のみ(業界での競争状況が強くない)であり、コストと品質で同等の水準となる供給業者が 10 社も存在している(供給業者の交渉力が強くない)。また、顧客の規模が類似している(買い手の交渉力が強い)ことから、最も高い収益性が期待される。

用語の解説

 マイケル・ポーターの5フォースモデルは、以下の図のとおりです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次