個体群生態学モデルに関する中小企業診断士試験・過去問での設問について、専門用語(用語の解説を参照)を知らなくても常識に基づいて解説します。
企業経営理論 令和4年度 第20問
共通の組織形態を持つ組織個体群と環境の関係を分析する理論に、個体群生態学モデル(population ecology model)がある。このモデルは組織個体群の変化を、「変異(variation)-選択・淘汰(selection)-保持(retention)」という自然淘汰モデルによって説明する。個体群生態学モデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 既存の組織形態を保持しようとする力が強ければ、新たな組織形態が生まれる可能性は低くなる。
イ 個体群生態学モデルでは、環境の変化に対して自らの組織形態を柔軟に変化させて対応できる組織群が選択され、長期にわたって保持されることを示唆する。
ウ 組織内の部門が緩やかな結合関係にある場合、変異が生じる可能性が高くなるが、保持されている既存の組織形態の存続の可能性は高くなる。
エ 変異段階で新たに生まれる組織個体群は、既存の組織から派生してくるケースは少なく、独立した企業者活動を通じて生み出される。
オ 変異によって生まれた組織個体群は、政府などによる規制や政策によって選択・淘汰されるが、規制が緩和されれば保持される組織形態の多様性は減少する。
正解
ア
解説
設問冒頭に個体群生態学モデルについて説明されています。「変異」「選択・淘汰」「保持」という言葉を念頭において、各選択肢を読み進めます。
ア 既存の組織形態を保持しようとする力が強いとの記述から、保守的な組織が思い浮かびます。常識的に考えると、保守的な組織では、新たな組織形態が生まれる可能性は低くなります。よってこの選択肢は適切です。
イ 環境の変化に対して自らの組織形態を柔軟に変化させて対応できる組織群が選択されるということは、冒頭の定義のうち、「変異」に該当すると想像できます。これは後段の「長期にわたって保持」に矛盾します。よってこの記述は不適切です。
ウ 組織内の部門が緩やかな結合関係にある場合、それぞれの部門が独立した行動をもって環境の変化に対応し、「変異」が生じる可能性が高くなります。そうすると、「保持」されている既存の組織形態の存続の可能性はむしろ低くなると考えられます。よってこの記述は不適切です。
エ 変異段階で新たに生まれる組織個体群は、独立した企業者活動を通じて生み出される場合と既存の組織内が「保持」しようとするより、環境の変化への柔軟な適合を試みるケースも考えられるので、この記述は不適切です。
オ 変異によって生まれた組織個体群は、政府などによる規制や政策、指導方針に適合しなければ淘汰される。これにより、規制が緩和されると、保持される組織形態の多様性は増大すると考えられるので、この記述は不適切です。
用語の解説
【個体群生態学モデル(population ecology model)】
組織には構造的習慣があり、組織の環境適合には限界があります。それで環境に合わない組織は淘汰されるという考え方です。環境の影響を受け組織個体群の中に新しい特徴を持った組織が生まれます。これが「変異」です。そうした組織の内、環境に適合する組織形態は「選択」され、適合しない組織形態は「淘汰」されます。選択された組織形態は環境に適合している限り存続することになります。これが「保持」です。
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