社労士選択式試験で40点満点中、35点(1科目10点満点中、5科目4点、3科目5点)を得点した筆者が、選択式問題で高得点をとるための独学での学習方法を紹介します。
1 社労士試験の選択式問題は難問揃いです
社労士試験の選択式問題は、国語力が大事だという言葉をよく耳にします。空欄の前後の文脈から正解の選択肢を選ぶ文章力が不可欠だといいます。
しかし、選択肢として用意された語群には、どれもが正答であるかのような語句が巧妙に並べられていて、また法律特有の言い回しもあり、国語力があると返って間違えた語句を選んでしまったという経験がある方が多いのではないでしょうか。
合格ラインは各科目5点満点中3点以上が必須ですが、問題によっては正答者が少ない問題が出て、救済措置がとられ、2点でも足切りにならない科目が毎年出るほどです。
また、選択式問題は、たまたま得意な分野が出題されたかノーマークの部分が出題されたかで、運が左右する試験でありともいわれています。
社労士試験受験者の中には選択式の1点に泣いた方も多くおられるのではないでしょうか。
2 選択式対策は、訓練を積むことです
社労士選択式試験には、秘訣やコツのようなものはありません。しかし、20の選択肢から5つの正解を選ぶ訓練を重ねれば、攻略することができます。
ちなみに。送られてきた合格通知はがきによる点数は下のとおりです。
択一式試験はギリギリ合格点でしたが、選択式試験では、訓練の結果、本試験では選択式は5科目が4点、3科目が5点で、余裕をもって合格できました。
そこで、選択式問題を実際にどのように学習したかを紹介します。
選択式に悩む受験生の方々の参考にしていただければ幸いです。
3 まずは、テキスト等による学習から始めます
もちろん最初は、テキスト等を読み込むことからはじめます。
独学の場合、いきなり基本書を読むと、記載されている内容がなかなか理解できず、眠気との闘いになってしまいます。
僕は独学で勉強したのですが、最初に基本書を読み進めていくと、労働基準法は何となくわかった気になっていたのですが、労働災害法の途中から全く書かれている意味が分からなくなり、厚生年金法に至っては、ただ字面を追っているだけで、ほとんど理解できませんでした。
そこで、基本書よりかなり薄い入門書を何度か読むことを勧めます。遠回りに思えますが、全科目の概略が掴めるので、結果的に効率よく学習できます。
テキストや基本書はあくまで問題集による学習の準備のためのものです。仮にテキスト等をすべて覚えたとしても、本試験での択一式や選択式のひっかけ問題には到底対応できません。
4 次に択一式の学習をします
次は、択一式の学習です。択一式学習自体、選択式学習にもそのままつながります。
択一式は、既出の類似問題が何度も出ているので、7~10年間位の過去問集を使って学習するのが効果的です。
特に解説文の熟読は重要で、各々の選択肢の文章がどう間違っているのか、正しくはどうなのかなどの解説は選択式の語句選びにも役立ちます。
5 いよいよ選択式の学習を行います
一通りテキスト学習を終え、択一式の学習が進めば、選択式の問題集による学習を始めます。選択式は、特に問題集による学習が効果的です。
そこで、なるべく多くの問題が掲載されている問題集を選びましょう。
選択式問題は、20肢から5つの空欄に入れるべき語句を選びます。各々の空欄につき4肢から一つを選ぶことになります。
【第1ラウンド】
最初は、問題集を解くのではなく、空欄に正解の語句の入った問題文、つまり解答文を読みます。
その際、空欄に入れるべき語句をメモ用紙などに書きながら読み進めます。漢字を覚えるときの要領で、小声でつぶやきながら書いて覚えるようにすると効果的です。目と口と耳と手で覚えるという古典的な方法です。
ここで、覚えるというのは、問題と答えを丸暗記するのではなくて、条文や判例などの中で、どんな用語が穴埋めに使われているのか、どんな誤った用語が正解であるかのように選択肢に置かれていているのかなどといった出題のパターンと重要な用語を覚えるという意味です。
それから、人間は覚えたことをすぐに忘れてしまうことを前提に学習します。
エビングハウスの忘却曲線では、20分後に42%、1日後には67%忘れるとのことです。
それなら、少しでも覚えている間に繰り返し学習することが効果的です。
問題集を一通りすべて読み終わった頃には、前半のページに書かれていたことは、100%近く忘れてしまっています。
これでは、忘れるために勉強するようなものです。
そこで、最初から最後まで一通り学習するのではなく、20問を終えたら、第1問から20問目までをもう一度読み返します。もちろんこの時も正解の語句を紙に書きながら読みます。
2回目の第20問までの学習は、1回目よりも速いスピードで学習できるでしょうから、プラス20問、つまり第40問まで学習します。
3回目はさらに加速するでしょうから、第1問から第40問プラス20問、つまり第60問まで学習、この段階で第1問から第20問は、3回学習したことになります。
その次は、第21問から第80問を学習します。
これらをまとめると、以下の表のように繰り返すことになります。
3回目には、第1問~第20問は3回学習したことになる
4回目には、第20問~第40問は3回学習したことになる
5回目には、第40問~第60問は3回学習したことになる
このやり方で問題集1冊を終えたときは、すべての問題を3回ずつ学習したことになります。
【第2ラウンド】
ここからは、問題を解きます。
第1ラウンドで問題を解かなかったのは、学習に時間がかかりすぎるのと、2点以下など正答数の少ない問題が多くなると、学習のモチベーションが下がるからです。
第2ラウンドではじめて問題を解けば、ある程度の正答数が確保でき、問題によって5点から0点までのバラツキがでます。
そこで空欄5つのうち、何問解けたかをページの右上か左上に印を付けます。
全問正解は⑤、4問正解は④・・・
または、全問正解は◎、4問正解は〇、3問△、2問▽、1問▲、0問×などわかりやすいマークを定めます。
印は、なるべくマークするのに時間のかからないシンプルなものにするのがお勧めです。問題数が多いため、マーキング時間は結構バカになりません。
以上のように、すべての問題を何問解けたか印をつけながら解いていきます。
2回目は、正解3問以下の問題のみを解きます。1回目に付けた印の横に解けた数のマークを付します。
3回目の学習は、2回目に3問正解以下の問題を解きます。
1回目より2回目、2回目より3回目は解く問題数が少なくなっているはずです。
そして、解答を見る際、特に誤った問題では、正解以外の選択肢を確認しながら全体を読み返します。不正解の選択肢は、どれも正解であるかのような語句が並べられています。うまく作問されているものだと感心しながら、その中でもこの語句が空欄に入るのだなと思いつつ、読むのが効果的です。
4回目の学習では、かなり4問以上正解の問題も増えているでしょうから、4問正解以下の問題を学習します。
5回目は、まだまだ3点や2点の問題も多いでしょうが、そこは気にせず、第1ラウンドのように空欄に正解の語句の入った問題文を全問題一通り読みます。
6回目からは、第2ラウンドの2回目の学習から繰り返します。
6 選択式過去問題集も学習しましょう
過去に出た問題を学習することは、たいへん大事なことです。
選択式においても、択一式と同様に過去に同一テーマで出題されていることがあります。
また選択式で出題されたテーマがそのまま択一式に出題されたこともあり、択一式試験の対策にもなります。
学習方法は、過去問題集を解くのではなく、空欄に答えを入れて読んでおく程度でOKです。10年間分学習しても80問なので、この勉強法ならそんなに時間はかからないでしょう。
7 模擬テスト・受験月刊誌の選択問題で補充しましょう
模擬テストや受験月刊誌に掲載されている選択式問題を繰り返し学習しましょう。
どこの専門学校でも模擬テストは本試験よりかなり難しく作成されているので、点数を気にする必要はありません。特に法改正問題は、どのような問われ方をするのか、問題集では学習できない問題をカバーすることができます。
8 直前期の学習は月刊誌の特集号と専門学校の単一科目で
労働基準法は最高裁判例から、また社会保険に関する一般常識は、厚生労働白書などから出題されるケースが多いので、テキストや問題集以外の学習が必要です。
また法改正についても問題集や過去問集で学習できません。
判例や白書、法改正は、月刊誌の特集号で学習するほか、専門学校の単一科目講座を受講するのも効果的です。
特に一般常識は、毎年最新の情報が必要であり、学習すべき量が多すぎます。専門学校は大量の情報から当該年度の試験に出やすい箇所を絞って講義してくれます。
これら特集号や単科セミナーは直前期に組まれます。
択一式対策にもなりますので、特集号と単科セミナーのテキストを何度も繰り返し読み込みましょう。
因みに、受験した本試験選択式の労基法では、特集号及び単一科目のセミナーテキストに掲載されていた判例が出たので、気持ちがたいへん楽になりました。
以上、選択式対策として、実際に行った学習法です。受験生の皆さんに少しでも参考にしていただければと思います。
9 まとめ
社労士試験の選択式問題は、問題集を約20問ずつ細切れに、何度も繰り返し学習することが効果的です。20の選択肢から5つの正解を選ぶ訓練を重ね、問題のパターンを掴むことが合格への早道です。
このような攻略法で、こつこつ地道に学習すれば、独学でも合格することができます。